観光業における市場規模拡大に伴い、訪日外国人観光客ビジネスに力をいれなければと考えている方、また新たな観光資源を見つけたいという企業や自治体の方も多いのではないでしょうか。しかしなかなか見つからない。そんな簡単に新たな観光資源が見つかるのならばとっくに取り組んでいるわとお悩みの方もいらっしゃることでしょう。
「どんな」観光資源を「誰に」提供するのか
今回は、左部分の観光資源開発におけるアイディア設計について考えていきます。通常、企業のマーケティング活動においては、どの新たな層を取り込むのかというターゲットの設定から、何を提供するのかを考えることが多い(Who→What)のですが、各々の資源が限られている観光マーケティングではまず自分たちが何を提供できるのかを考えてから、ターゲットを決める(What→Who)方が効率的だと言えるでしょう。その際、今や日本人だけでなく世界中の人をターゲットとして想定できるため、自分たちが提供できるモノを必要とする人が世界のどこかには必ず存在するでしょう。
地元の人を巻き込もう
まずは現在の自分たちの町がどんな資源を持っているのかを知る必要があります。ポイントは企業や自治体の方だけで考えず、地元の人(の意見)を取り入れることです。メディアなどによる有名観光地情報を再確認するだけではなく、地元の人しか知らない昔からずっとある魅力的なスポットを見つけ出すことが欠かせないからです(たとえもし今は魅力が欠けていたとしてもこれから肉付けすれば十分新たな資源になりえます)。その場合、◯◯さん家のおじいちゃんの昔話や、◯◯公園の夕日など、思わぬおもしろスポットを地元の人は知っていることが大いにありえるでしょう。近年観光において、体験価値を求める消費者が増え、自分の町では体験できない非日常をいかに提供できるかがカギとなります。
アイディアは四則演算で考えよう
今までの人々の価値観を一変させるようなアイディアはなかなかすぐに見つかるものではありません。ゼロから考えようとするからしんどいのです。あくまでもアイディアとは要素と要素をどのように新しい組み合わせで考えられるかがカギとなります。そこでさきほど上で考えた、今ある自分たちの町の魅力を要素として書き出してみましょう。その書き出した要素を以下の四則演算で考えると良いでしょう(引用:アイデア・メーカー/山口高広 著)。
①足し算の例【大阪 ひらかたパーク】https://tsu-suke.jp/casestudy/815
遊園地はハードの陳腐化が起きやすいと言われていますが、”ひらパー兄さん”というキャラクターを確立しイベントを行うというソフト面を強化し、プラスαとして設計することで大きく来園者数を増やすことに成功しました。
②引き算の例【兵庫 書写山円教寺 特集パンフレット】https://tsu-suke.jp/news/2948
映画などのロケ地として人気な書写山円教寺1箇所のみを特集したパンフレットを作成しました。一箇所に絞るとその場所のことを密に考えることができるので、十二分に魅力を伝えることが期待できます。
③かけ算の例【山口 OTera Cafe(お寺カフェ)】https://tsu-suke.jp/news/3489
お寺×カフェという全く異質な2つの要素が掛け合わされることで、グッドデザイン賞を受賞。空いている空間と時間を整理し、本業を圧迫しない程度の什器をデザインしてカフェを開くという方法は極めて良案だと言えるでしょう。また、地域の住民とともにスイーツを開発するなど、コミュニティの力をうまく活かしています。
④わり算の例【高知 「めじかの新子」】https://tsu-suke.jp/news/3078
高知の漁師町で、8月~9月下旬の短い期間しか水揚げされない「めじかの新子」の刺し身を目当てに多くの観光客が訪れました。獲れてから半日以内でしか刺し身での食用ができないという一見デメリットになるような価値を弱めることにより、逆に”今しか手に入らない”という新たな価値を生み出しています。
以上のように、各地域にはまだまだ隠れた観光資源が眠っています。大切なのは、とりあえずできるだけ多くの量や多様性があるアイディアを考えることです。その後何度も練り直すことにより、他の地域にはあまりないような面白い観光資源を生み出すことができるのです。
その際には、弊社コラム等で何度も議論してきましたが、地域ストーリー作りが欠かせません。ぜひこちらの地域ストーリーに関する記事をごらんください。
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本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。
ポイント
- 各々の資源が限られている観光マーケティングではまず自分たちが何を提供できるのかを考えてから、ターゲットを決めるべし
- アイディア出しのときは地元の人を巻き込むべし
- 観光資源の発掘は四則演算で考えるべし