【2016年3月】地域活性化×マーケティングの視点で知っておくべき事例3つ

なんとなんと年が始まったと思っていたら、もう3分の1も終わっているようですね。3月が終わりましたので、今回も「ふりかえり事例紹介地域活性化ニュース」と題しまして、3月中に取り上げてきました地域活性化ニュース(地域活性化ニュースでは平日毎日地域活性化に関する事例を取り上げて配信しています、過去の事例紹介はこちら)を振り返ってい来たいと思います。地域活性化とマーケティング・ブランディングの観点から興味深い事例・学ぶべき事例を「3つだけ」に厳選して紹介いたします。

     

  1. Uターン助成事業は人口減少を食い止められるか 大子町の事例
  2. https://tsu-suke.jp/news/4323

    このニュースは、地域が抱える非常に難しい問題を解決しようとした政策について取り上げたものです。現状、大都市圏のほうが「年収」が高い(しかし、当然生活費も高い)、というようになっていることは事実であり、「地域に帰ってきたら金銭的利益がありますよ!」という金銭的インセンティブは、必ずしも効果的なものとはいえないでしょう。

    「地域のほうにも金銭的利益がありますよ!」ということを主張した例として、参考にされるべきものが鳥取市の事例です。
    鳥取市HP該当部分『地方暮らしの人生収支~とっとりの場合~』

    このページには、ファイナンシャルプランナーによるシミュレーション結果によって、東京と鳥取の金銭的メリットは長期的に見たらあんまり変わらないよ、ということを示しています。真偽は専門家ではないので定かではありませんが、「ファイナンシャルプランナーが」と言われると、なかなか説得力があるように思いますよね。

    金銭的なメリットという最も合理的な部分で東京と戦うのであれば、目先の人参ではなく、長期的かつ合理的な証拠によって武装すべきでしょう。そうでないのであればその分野で戦うべきではないですし(愛郷心などの非合理的部分で戦うのが望ましいでしょう)、鳥取市の事例のように武装しておいた上で、鳥取にはプラス「絆・自然・ゆとり」があります、というように宣伝するのが望ましいように思います。

    紹介した鳥取市の見せ方は上手であるように思います。移住者の中では「すべて捨ててきた」的な人が注目される傾向にありますが、ほどほど地方部で、暮らしやすいといった合理的な側面を欲している人が多数のように思います。現実的なところをアピールして移住促進を行うのも重要でしょう。

    移住促進で「大自然」アピールに終始してたらいけませんよ、というお話を以前しました。こちらも併せてご覧ください。
    移住政策を考える人のための「移住・交流情報ガーデン」「全国移住ナビ」入門

  3. 竹田城の山開きが延期 地域活性化とどのように結びつけるか
  4. https://tsu-suke.jp/news/4261

    ニュースをもとにして、竹田城が抱える重大な問題のひとつだと考えられる、「顧客単価の低さ」について取り上げました。多くの自治体において、「観光客の数を増やすためにはどうすれば良いか」ということばかりが中心に議論されていますが、地域にとっての収入を増加させるということを考えれば、一人当たりの顧客単価を増やすこと、消費額のうちの地域が生産した額を向上させること、より一次波及効果が大きい消費をしてもらうこと、といった手法も検討されるべきでしょう。(3つのポイントで解体! 経産省「地域ストーリー作り研究会」報告書より)

    おそらく朝来市や兵庫県が即急に取り組むべきことは、竹田城を話題化させて観光客を増やすことではありません。大きく名が売れたことを利用して、コアなニーズを持ち、客単価が高くなりうる人に対して訴求を行う、あるいはバスツアーなどで訪れるライトな観光客に対してひとりあと1000円消費させることを考える、などして、顧客単価を上げていくことになると思います。

    そのためには、競争戦略的な視点から考えることも重要でしょう。他の地域で宿泊している人をどのようにすれば朝来で宿泊させることができるのか、香住でカニではなく、朝来で昼食を食べてもらうには、どのようにモデルコースを設計すればいいのか、などなど、考えることは様々にあるように思います。

    通助ではこのように「競争的側面」から地域活性化を考えることも重要だと思っています。みんなが幸せ、みんなが儲かる、といった漠然とした「良いこと」的地域活性化観から抜け出し、冷静にビジネス的競争の観点を取り入れることも重要です。
    詳しくはこちら→地域活性化は競争だ

     

  5. ブランディングの視点から見る「お前をKILLツアー」 地域活性化の成功事例といえるか
  6. https://tsu-suke.jp/news/4308

    最近の地域活性化をめぐるニュースの中で、そこそこ大きく取り上げられた面白いニュースでした。しかし元の記事ではこれについて、移住政策などの他の面を阻害する可能性があり、ブランディングの観点からは良い政策と言えない、ということを論じています。

    このニュースは地域活性化をめぐる議論の中で、最も難しいのではないかと思われる問題をはらんでいます。つまり、「誰に対して利益が出るのが地域活性化なのか?」ということです。地域にはあまりに多くのステークホルダー(利害関係者)がおり、彼らが共通して目指すべき路線、が明確に存在しているとは言えない点が挙げられるでしょう。

    このツアーは、「酒屋」、「飲食店」などに対して直接利益をもたらしています。しかし逆に、このツアーが有名になったことで「短命県」のイメージが移住者などに定着してしまった可能性があることによって、空き家を改築して移住者に提供しようとしていたひとにデメリットを与えた可能性もあるでしょう。どちらかの利益をとったら、別の利益が立たないことは、地域活性化においてはしばしば見られるものです。

    こういったことについては、青森県が県のブランドを責任を持って管理しなければならないと思います。このツアーのように、いくら面白いと考えられ、実際に多くのひとを集める可能性があるものでも、県のブランドイメージ・コンセプトに本当に合致するものなのか、という部分でNGを出す判断をしなくてはいけなかったように思います。

    無論、地域のことを真剣に考え、様々な奇想天外な意見を出してくれる学生がいることは素晴らしいことだと思います。彼らとの協働の上では、彼らのイメージ力を市場や全体的なブランディングに関しても働かせてもらえるように誘導を行う必要があると思います。また、大学生も地域に行って「突飛なことを言うことこそが重要」とは思わないほうが良いと思いますよ。
    いわゆる「よそ者、馬鹿者、若者論」に対して通助の考えを述べてみましたので、詳しくはこちらをご覧ください。
    地域活性化事業における大学生との協働で覚えておきたい3つのコト

これらの通助の主張をシンプルに言えば、「地域活性化においても、顧客にとっての価値を長期的に高めること」について考え抜くのは極めて大切ですよ、そのために使えるコンテンツ(主にマーケティング・ブランディングの知見)を提供しますよ、ということです。世の中には、時間効率や安さ以外にも顧客にとっての価値が溢れていると思います。そういったものに対して価値を付与して積極的に発信していくことで地域活性化を成し遂げていくべきである、というのが通助の考えです。4月からも、顧客にとっての価値を長期的に高める方法について、情報の発信を行っていきたいと思います。

本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。
地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜