「ふるさと納税」を『流行』で終わらせない為に意識すべきこと

「ふるさと納税」という言葉は雑誌やニュースで度々取り上げられ、知名度が上がりつつあります。「ふるさと納税」では寄付に対して特産品等をお礼として納税者に送付する事が一般的に行われ、その特産品目当ての納税者も多く,現在流行しているものの1つと言えます。ふるさと納税の現状に関しては税金の無駄遣いという批判も有りますが、今回はその議論ではなく『流行という一過性の物に終わらせることなく、「ふるさと納税」をいかに地域活性に繋げるか?』という視点で記事を書いて行きたいと思います。

Amazon,楽天と同一視だけはされてはいけない

現在「ふるさと納税」はAmazonや楽天のような通信販売と変わらず大型特産品展の様相を帯び始めています。実際に確定申告等を視野に入れるとお得になるケースが多々あり、そのお得さから納税し、商品を手にする人も多くいます。それ自体は悪いことではなく賢い選択肢の一つといえるでしょう。しかし、地域側がそれに同調し「お得さ」を売りにした大特産品展を展開するのでは「ふるさと納税」の意義を失い、以前より応援してくれていたコア層を逃す危険性が生じかねないので注意が必要です。

「ふるさと納税」の『ふるさと』を考え直す

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「ふるさと納税」に納税者が求めたい要素とは何があるでしょう?そもそも「ふるさと納税」とは地元を離れ他の土地で働く人が地元に何らかの貢献をしたいと思う心であったり、地元以外の思い入れある土地を応援したいという気持ちから始まっています。そのような「ふるさと」の他の土地との最大の違いは観光地のように行くのではなく、帰ることのできる場所、落ち着く場所であるということでしょう。その為、「ふるさと納税」においても納税者に対していつでも気軽に土地に寄ってもらうべく配慮が必要となってきます。地域の最大の応援者はその土地生活者や縁を持つ人であるということを忘れてはいけません。

地域としては「応援」の代償行為として納税をしてもらうという認識を忘れてはいけません。「応援」されるための第一段階としては、認知してもらうという必要があり、その導入として特産品を使うのは効果的な一手と思われます。しかし特産品を推しすぎると特産品の応援者を募るに止まり、地域の応援者獲得には至りません。つまり通信販売の域を出ることができないということになります。

「モノ」売りから「コト」売りへ

応援をしてもらうには相手に「共感」を抱いてもらう必要があります。モノ売りからコト売りへ、とは金銭的なインセンティブから感情的インセンティブの度合いを高めていく事が必要となってきます。

率直なものだと納税者に感謝状のみを送るというものが考えられます。しかし、現在ふるさと納税のポータルサイトである「ふるさとチョイス」に掲載されている商品のうち「感謝状等」といった感情的インセンティブに重きをおいた商品は全体の1.5%程度しかありません。「買えて良かった」から「納税して良かった(満足した)」と感じてもらえるように意識していかなければ一過性のものとして忘れ去られて行くでしょう。

モノ売りからコト売りへ ~長期顧客を獲得したければ、感情的インセンティブを刺激すべし。

感情的インセンティブを売りにした商法の代表的なものがアイドル産業だと言えます。アイドルのCDやグッズが高くても売れるのは買い手の多くが商品に対してではなく、買うという行為を通して「そのアイドルを応援しているという気持ち」を買っているため、高くても売れるのです。その感情こそがインセンティブになっていると言えます。同様に応援される主体として地域も感情的なインセンティブを納税者に届ける必要があります。

「ふるさと納税」において、お客様として納税者を扱うのではなく納税者の感情に働きかけ、お客様から応援者へと移行させる姿勢を持ち続けるべきです。その意識を持たせることで通信販売ではなく「地域活性に繋がるふるさと納税」の実現が可能となるでしょう。


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 通信販売とは違い「商品」ではなく「地域」にお金を払っているという意識を納税者に意識させることを忘れてはいけない。
  • 応援してもらう主語が「地域」となるよう配慮すべき。
  • 納税者から応援者へと移行させる「共感」作りを盛り込むべし。