掛け算で考える

ある商店(通助商店、とでもしましょう)の売上を上げようと考えたとします。どういうプランを考えますか? チラシ、(お金があれば)テレビ CM、クーポン、はたまたティッシュ配りや大安売り、商品構成を変える、看板を立てる、などなど、いろんなアイディアが浮かぶかと思います。それはそれでいいことではあるのですが、一歩下がってから考え始めるのも大切です。その時、活躍するのが小学生の時に習った掛け算の考え方です。

まずは、通助商店の売上を掛け算で表してみます。

売上 = 全購買者数 × 平均単価

となりますよね。シンプル。まずはシンプルな掛け算からスタートするのがコツです。

では次に、右辺をもう少し分解できないか、と考えてみます。そうすると、

売上
= 全購買者数 × 平均単価
= 全来客数 × 購買率 × 平均単価
= 1店舗平均来客数 × 店舗数 × 購買率 × 平均単価

などなど、ちょっとずつ分解していけるはずです。分解された結果、売上は右辺の 4 つの項目で説明できることが分かります(さらに分解できますが)。

さて、もともとの目的は、「売上を上げる」でした。売上を上げるという目的は、実は細分化されて、「1店舗平均来客数」または「購買率」または「店舗数」または「平均単価」を上げる(かつ他を下げない)、という目的に置き換えられることになります。

次に考えるべきことは、それぞれをどうやって上げるか、ではなく、現状どうなっているかの大まかな把握です。なぜでしょう? じつはここに掛け算のビューティがあります。

掛け算である意義、それは右辺の 4 つの要素のうち、一つが 2 倍になれば、必然的に売上も 2 倍になる、ということです。足し算ではこうはいきません。これはどういう意味があるのでしょうか。ここで注目しておきたいのは、絶対値よりも割合が重要、ということです。つまり、購買率を 1% 上げるという絶対数が一緒でも、現在の購買率が 2% から 3% に上がるのと、50% から 51% に上がるのは、同じなようで、掛け算上は全然違う意味を持つということです。前者は売上へのインパクトが 1.5 倍なのに対し、後者は 1.02 倍にすぎないのです。

当たり前のことですが、モノゴトにはノビシロというものがあります。1% を 2% にする労力と、99% を 100% にする労力はまったく異なります。だからこそ、今どれくらいで、どこにノビシロがあるのかを理解することが、プランを考えることよりも先に来る必要があります。

ここまで分かったら、次はそのポイントを上げるためのプラン作りです。もともとの「売上を上げる」という目的が、(たとえば)「購買率を上げる」に落とし込まれ、よりプランを考えやすくなったはずです。プランから先に考えてしまうとなかなか難しいですが、購買率を上げることだけに注力すれば、意外といろいろ出てくるかもしれません。

オマケとして、リスクも分かりやすくなります。大安売りのチラシは、来店数と購買率を上げるかもしれませんが、平均単価を下げる可能性があります。プラスとマイナス、どちらが大きいんだろう、って考えるのも、重要です。


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ポイント

  • 掛け算で考えることによって、モノゴトの決定要因が明確となる
  • 掛け算で考えることによって、現状の問題点やノビシロが明らかになり、集中すべき領域が浮き彫りになる
  • 現状の問題点を把握してから、プランを立て実行する