「いなか」おこし! ―地域ブランド戦略を創る – 信田 和宏著

こんな人にとくにおすすめ

  • 地域活性入門者で、ブランディングやマーケティングの知識があまりない人

感想

ブランディングの基本中の基本を地域活性を絡めてまとめ上げたという意味で、筆者は新しい提案をしていると思うのですが、一方で基本的なブランディングの方法論や考え方に馴染んでいる人にとっては、対象が商品なのかサービスなのか製品なのか地域なのかといった違いしかなく、「地域開発」ならではの知見を得ることは難しいのではないかと思います。ケラーやアーカーのブランド論をある程度理解している人にとっては得るものは少ないでしょうが、ブランディングやマーケティングに不慣れな地域活性の視点から入ってくる人に基礎的なフレームワークを提供するという意味で、有用な本だと思います。

残念な点としては、筆者のクセなのか、ひとつの段落にひとつの短文しかないケースがほとんどで、読んでいてテンポが悪く論理構成がつかみにくいところ。また短文で段落を構成しているため余白があまりに多く、170ページ弱の本書ですが、実際のコンテンツはさらに少ないと感じました。

大学院教授が書いている本とはいえ、実務家出身の教授らしくアカデミックな側面はほとんど感じられない平易な本となっています。読みやすくすっと入ってくる本だが、参考文献・引用文献が一切紹介されていないため、この本を足がかりに知識を漁っていくという使い方はできません。いわゆる定番のフレームワークを多用しているだけに、この点は非常にもったいないように思います。さまざまなフレームワークが紹介されているもののかなり浅い記述にとどまっており、バックグラウンドのない読者は本書を読んでも SWOT 分析ができるようにもならないし、コンセプトも作ることができないし、ポジショニングも満足いく分析はできないのではないでしょうか。本書で完結せずに、次へのステップを意識して読み解くと本書の価値が高まると考えます。


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。
地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜