B級グルメイベント会場で売れるものは?

11月15・16日に徳島県海部郡美波町で開催された「第6回全国丼サミットinみなみ」に参加しました。

丼サミットは、全国地域おこしご当地丼会議が開催している食イベントです。全国地域おこしご当地丼会議によると開催の目的は、「地域の事業者団体等が協同して実施する地域おこしご当地丼事業が、各々の地域の食材等を生かした丼を通じて、相互の発展と食文化の継承及び地域経済の活性化に資すること(公式HPより)」だそうです。この目的のもと、多くの地域が自慢の「ご当地丼」を持ち寄り、販売していました。

この丼サミットによって、人口約7000人の美波町に、2日間で合計5万9000人の観光客(主催者発表)が訪れました。美波町の観光客は海・川遊びができる夏(川遊びは最高です)と初詣シーズンに集中しています。しかし当時の会場周辺では初詣や夏休みといったオンシーズンと同等の観光客が見られました。丼サミットに参加したことで、私も「食」、「B級グルメ」の持つ集客力の大きさ、地域活性化への貢献の可能性について勉強できました。

イベントにもマーケットインの視点を

さて、丼サミット会場にはご当地丼を販売するブース以外にフリースペースがあり、そこで地元の工芸品店、近隣自治体の青年団、飲食店などの様々な団体がそれぞれのウリとなる商品を販売していました。そこでは飲食物から日用雑貨、植物まで様々な物が販売されていましたが、よく売れているブースとあまり売れていないブースに分かれていたように感じました。

この結果は、丼サミットに訪れる観光客がどのようなニーズを持ってるのかの分析を重視したかに終始すると考えています。団体のウリを前面に押し出すことは間違ってはいません。しかし、それだけに終始する(プロダクトアウト)のではなく、丼サミットに訪れる観光客のニーズを考え、ニーズと団体のウリとのすり合わせを行う(マーケットイン)の発想が大事です。

観光客の特徴は?

では丼サミットに来る観光客はどのようなニーズを持った人々なのでしょうか。私が会場を見て回った限り、車・電車で3時間圏に住む徳島県内、近隣県(高知・神戸・香川ナンバーの車)の人々からなる2〜5人の集団が大多数でした。

この集団には、とにかくご当地丼をお腹いっぱい食べたいと考えている人(リーダー)とその家族・友人(フォロワー)の2者が半々ほどの割合で構成されているという特徴があったと考えています。これは集団を観察していると、リーダーと思しき人が買ってきたご当地丼を少しだけ譲ってもらいながら、別の物を食べている人が見受けられたことが根拠です。フォロワーの中にはリーダーに「連れてこられた」意識を持つ人もいることでしょう。しかしフォロワーも会場に来て、「せっかく食イベントに来たのだから、お腹いっぱい食べて帰ろう」という意識を持ち、無視できない消費層のひとつを構築していたように思えました。

彼らに何を売るべきか?

このようなことを踏まえて、丼サミット会場では何を販売すればよかったのでしょうか。フォロワーに人気を博した成功例として取り上げたいのが牟岐アオリイカ黒焼きそば(牟岐商工会青年部ブース)です。

牟岐商工会青年部ブースでは、フォロワーを対象としてご当地丼とは別種の満足感を与えてくれる食品として焼きそばを選択し、販売していました。「ご当地丼はある程度でいいや、それより麺類を食べよう」と考えるフォロワーの心を掴むことに成功していたように思います。もし、リーダーをターゲットとして販売するのであれば、食べ過ぎに効く黒烏龍茶や丼を美味しく食べられるビールなどを用意するのが妥当だったでしょう。


イベントの前段階において、どのような人が訪れるかを考えて、自身が販売したいと思うものにとらわれず、観光客が欲しいものを考えてみる。このことで、観光客の消費額や満足度を高めることが可能になります。地域活性化を考える上でも、こういった視点は極めて重要です。

また、B級グルメイベントに訪れる観光客にとって、大会名に冠されるメイン食品を食べに訪れるリーダー以外の、リーダーと一緒に会場を訪れるフォロワーも無視できない消費層を形成しています。B級グルメイベント会場の隣にブースに出店する場合は、こういったフォロワーを意識した食品を提供することが望ましいのではないかと考えられます。

本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

 ポイント

  • イベントに訪れる観光客がどのような特徴を持っているかについて、あらかじめ考える事が大切です。
  • 出店の目標が物販の成功であるのなら、自分の売りたいものを売るのではなく、観光客が売って欲しいものが何かを考え、それとのすり合わせをする必要があります。
  • フォロワーとリーダー、どちらに向けて販売するのが望ましいのかを考えましょう。食イベントにおいて、メイン食品を食べに訪れないフォロワーも大きな消費層となっています。