ドラマ放送終了!『限界集落株式会社』で考える地域活性化(ネタバレなし)

こんな人にとくにおすすめ

・「田舎暮らし」に漠然とした興味がある人
・「地域活性エンタテインメント」という煽り文句に惹かれる人
・手軽な恋愛小説を読みたい人

感想【以下、ネタバレは含まれていません】

止村という小さな集落で展開される集落営農組織、法人化による農業再生と、そこで働く人達の恋模様を描いたフィクション作品です。2011年に小学館より出版されました。
リーダーのもと、パッとしなかった人達が適材適所についてゆくことで、それぞれの能力を開花させていきます。それによって、敵役をギャフンと言わせてゆく展開は非常に痛快です。
「地域活性エンタテインメント」という煽り文句は、作品の内容を上手に表現したものだと思います。なぜなら本作品はあくまでもエンタテインメント小説であり、地域活性化に取り組みながらも、その内容よりも、取り組む登場人物の人間模様に力点を置いているからです。しかし、地域活性化という観点から読んでも応用できそうな考え方はあると思います。

応用できそうな考え方

作中では、伝統的な農業は儲からないと分かっていながらも合理的な農業に踏み切れない集落住民の葛藤が巧みに描かれています。このような、先祖代々の土地を捨てたくない、昔から作っている作物を変えたくない、といった話は現実世界でもよく耳にする話です。しかし、もし農業で利益を上げることを考えるならば、自分が作りたいものを生産性の低い方法で作るのではなく、消費者が求めるものを安く提供するためにやり方を変える、という考え方が間違いなく必要になるでしょう。作中では、敵のおかげで村全体が合理的な農業に舵を切れますが、現実で応用する場合は、どのようにこのような方向性で一致団結させるか、という組織運営能力が重要だと思います。現実世界にはこれほど軽薄で嫌味な敵はいませんからね。

また、若者の就農に対する目線もバランスが取れていると思います。作中で筆者は、地方に行けばとりあえずなんとかなる、気楽に生きていける、というような主張を、登場人物の言葉をもって批判しています。その一方で、小説全体として、都会では与えられなかった、地方ならではの自分の個性を発揮する場を与えられた上で、本気で頑張り抜くことにより、輝くことができる、というメッセージを発信しています。強い個性を持つ専門的な人物を大きな目標の達成のために配置する、という考え方は、自治体等での雇用を考える上でも重要なのではないかと思います。

少し物足りない考え方

ネタバレにならないようにマイルドに書きますが、作中でイベントによる活性化案が登場するシーンがあります。しかし、なぜそのような種類のイベントを開催するのか、そのイベントに参加する人にどうなって欲しいのか、あるいはどのようなイメージを与えたいのか、そのイベントが発信するイメージは止村の理想とする地域ブランドイメージに合うものか、などを考えることが抜け落ちています。現実ではイベントを行う際に、これらの点には留意したいところです。

また、作品で行われている農作物を高く売るための工夫はベタベタです。同じ手法を真似するのではなく、生産物の価値を向上させる、という根幹の部分に基づいて、それぞれの土地に合わせてどのような手段をとるべきか、自由に発想することが求められるでしょう。

この本の続編が、『脱 限界集落株式会社』として2014年に出版されました。また、2015年1月31日よりNHKにてTVドラマとして映像化されます。こちらも合わせて見てみると面白いでしょう。

止村が抱えていたような具体的な問題に対して、優君が帰ってきてくれるのを待たずとも、通助の運営会社である株式会社ホジョセンでも解決策を提案しております。是非とも弊社の無料レポートのうち、地域ブランド育成に関するレポートもご覧ください。