商店街に関わるなら知っておきたい、商店街活性化を考えるヒント

このブログでも何回か取り上げてきた商店街活性化というテーマ(記事リンク:枚方家具団地の手法商店街の売上を掛け算で考える)ですが、今回は中小企業庁が2005年に作成した「消費者にとって魅力あるまちづくり実践行動マニュアル」(以下ではマニュアルと称します)を参考にしながら、商店街活性化について考えます。このマニュアルはpdfファイルがアップロードされているので、無料で自由にダウンロード、閲覧することが可能です(リンク左下部分、PDF 閲覧をクリック)。
これまでの商店街に関する記事はこちら

掛け算で考える

マニュアルは冒頭で、商店街が厳しい競争社会で魅力を失っていること、そして魅力を取り戻してゆくためには、個々の店舗が変化する消費者のニーズに合わせて、商品やサービスを提供していくことが重要であることを指摘しています。そして、そのためにはどのように現状や競合などを分析し、どのようにコンセプトを立ててゆけば良いのか、どのような実践を行うべきなのか、評価をどうするのか、に答えています。それにより、補助金に頼ることなく、自力で存続・発展する方向性を示しているのです。この部分で中心市街地における事例や実践の紹介、あるいは補助金の紹介を行う他のマニュアルとは一線を画しています。

このマニュアルが特に優れている部分は、「活性化」という言葉をごまかしで使っていないところです。行政が行う活性化事業の中には、活性化という言葉の曖昧さを有効に使い、ありとあらゆる人・店舗に利益があると総花的に論じているケースが少なくありません。しかし、マニュアルは「ショッピングセンター的手法を活用した」とある通り、活性化した後の姿を想像させ、同業を意識し、そこからいかにして客を奪ってくるかを考える必要性を強調しています。地方自治体の中心市街地活性化計画ではあまり見られないシビアな見方ですが、このような考え方のもとで、コンセプトを決定することは、商店街活性化を考える上で重要なはずです。

次に、マニュアルを利用する際の注意点を述べます。1つ目は、マニュアルは商店街を訪れる人を増やす、という点を重視しすぎているということです。以前のブログ記事でも触れました通り、売上を増やすことを考える際に、購入人数を増やす方法をとらずとも、一人当たり単価を増やす方法もあります。さらに、購入人数を増やすことを、商店街に入る客の人数と実際に店で買い物をする人の割合に分解して、どちらを増やすかを考えるということもできます。これについては過去「掛け算で考える」で詳しく触れましたので詳しくはこちらをご覧ください。

掛け算で考える

2つ目は、中心市街地を分析する時の枠組みとして、SWOT分析を用いていることです。以前のブログ記事で示しました通り、SWOT分析は地域活性化において、正しく利用することは難しいです。これについては過去、「SWOT分析なんてやめてしまえ、今すぐに」で触れました。詳しくはこちらをご覧ください。

SWOT 分析なんてやめてしまえ、今すぐに(2015/3/25補足あり)

商店街活性化のためには、ひとつひとつの商店が補助金に頼ることなく、自力で存続・発展することが大事です。あまり注目されることのないマニュアルですが、この部分で必要なことが書いてあるマニュアルと言えるでしょう。TMO、市町村職員の方々、そして商店街活性化に携わる、あるいは興味がある大学生は、一読する価値のあるものかと思います。


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 商店街活性化においても、どのようなライバルがいるのか、明確に考えることは重要です。
  • 商店街に訪れる人を増やすことだけに捉われずに、掛け算で分解した他の要素も検討してみましょう。