“バル”イベント参加店舗が、参加者を顧客化するために意識したい点

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先日、とあるバルイベントに参加してきました。前からずっと気になっていたお店に行くことができ、楽しいひと時を過ごすことができました。

現在、様々な地域で地域の活性化を目的とした“⚪︎⚪︎(地名)バル(注1)”といった名前のイベントが開催されています。

今回は「参加する飲食店にとってのバルイベントでの成功」をテーマにマーケティングの視点を入れつつ考えていきたいと思います。重要な点は、「参加者がイベント中のお店を楽しみにしていることを意識する!」ことです。

店舗側にとってのバルイベントの目的は?

参加者にとって、バルイベントは未経験の飲食店の開拓にうってつけです。なぜなら店の雰囲気や味を定額でお試しすることができるからです。このような未経験の飲食店を利用する場合に気になる点は、「お店の雰囲気は良いか?」「値段は想定の範囲内か?」「味は良いか?」などでしょう。バルイベントはこれらの不安点を定額で確認することが可能な非常に良い機会となりえます。

ここで出店店舗側が注意すべき点は、バルイベントでのお客は新規顧客ではなく、「あくまで“お試し”のお客」であるという点です。“バル”という状況下であるから来てくれた、「来店数0.5回」くらいのお客であるという認識を持つことが重要となってきます。

「イベント中の売上向上」や「単純な知名度の向上」のみを目指すのであれば無駄を削ぎ落としイベント中に多くの客を捌く努力に特化すれば良いですが、次につながる新規顧客の獲得を目指すのであれば、「認知度向上」を目指す際にもう一歩踏み込んで、お客に「イベント後も自分が利用する様子を妄想させる」という所まで意識させる必要があるでしょう。

つまり出店店舗側としては、“バル”イベントに参加する目的を「店舗の知名度向上と入店体験の創出」さらには「店舗を恒常的に利用してくれる顧客確保」に設定すべきだと考えます。「イベント時の売上向上」などを目的にすることは長期的な利益から見て、望ましくないでしょう。

3f10520b4e06d557353e83ba1058ee67_s(“入店体験なし”というのはお店の雰囲気や価格帯を掴みにくいので、このバリアを取り払うのには大きな意義があるでしょう。)

バルを通して、新規顧客をつくる

こういったことを意識するとバルで大事になってくるのは、お客さんに「自分が平常時にお客としてお店で楽しんでいる姿」を想像させることになります。具体的にはメニューをお客が見る機会を作る事や(イベントの効率化の為にメニューを隠す等はもったいない!)、名物の紹介(お店の大将や従業員、メニューなど)を掲示するなど、実際に1回目訪れた際の楽しみ方を想像させる仕組みが求められてきます。

イベント中に“お店を楽しみに来店している”人たちは、あくまでも“(イベント中の)お店を楽しみに来店している”人たちです。この「“ ”括弧書き」を見落とさないように注意する必要があります。


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ポイント

  • イベントでの初来店者は、新規顧客とは呼べません。「0.5回目」というような感覚を持つべし。
  • バルイベントの最中に、自分がその場を実際に利用する姿を妄想させるべし。
  • バルイベントで訪れる人たちは、「イベント中の」お店を楽しみに来店している人たちであることを意識すべし。

(注1)
「バル」とはスペインやイタリアなどの南ヨーロッパでの、居酒屋や軽食喫茶店を指します。ドリンクと共にピンチョスと呼ばれる軽いおつまみを楽しみつつコミュニケーションに花を咲かせる場所として多くの人に親しまれています。
日本でのイベントとしてのバルは、2004年に北海道で始められ、現在では全国各地で開催されています。“バル”イベントは主に商店街などを舞台にして行われます。参加者はチケット(相場は500~700円)を購入し、そのチケットを手に様々な飲食店にてチケット1枚と1杯+おつまみを交換します。多くの場合は5枚ほどの綴りチケットであるため気軽にはしご酒が出来るという点がポイントとなっています。(最近は「参加証」を購入して参加する場合もあります。※その場合使用回数制限はなし)