今回お邪魔したのは、東須磨に本店を構える「神戸洋藝菓子ボックサン」(以下、「ボックサン」と略)です。創業から50年を超え、現在では三宮、梅田等で6店舗展開している同社にお話を聞きました。インタビューに対応していただいたのは、2代目である福原敏晃氏(代表取締役)と息子の匡孝氏(営業課長)です。
http://www.bocksun.com
50年間変わらないボックサンのコンセプト
—創業当時から、変わらないものはなんでしょうか?
「『甘みは旨み』という創業者からの教えです。創業当時は、作れば売れるような状態でした。クリームなどの甘いものは、戦後当時ではまともなものがなかったからです。今となっては市場が飽和状態ですので、決して作れば売れるという状況ではないですが、創業者からの教えを今も守っています」と2代目の敏晃氏は語っています。
—「甘みは旨み」の教えを守り続けている理由はなんでしょうか?
「甘いものを食べると、人って元気になるでしょう。疲れていても、甘いものを食べるとホッとしますよね。ボックサンのケーキが、食べた人の元気の源になるといい。そういった理由から、ボックサンのケーキは砂糖をたくさん使っているんです」。
確かに、疲れたときには甘いものを食べて癒やされたいと思う人は多いでしょう。ボックサンが創業当時から守り続けたいと思う味には、消費者の「甘いものを食べてホッとしたい」という想いに応えたい、という考えが強く影響しているのでしょう。
—最近では、甘さ控えめのスイーツも流行っていますが?
「そうですね。でもよそで流行っていても、うちでは流行を追わないんです。だって、甘さを控えめにしてしまうと、それを食べたお客さんも心からホッとできないでしょう。お菓子は甘い。甘いからこそ、元気なれる。そう信じています。だからうちでは、甘さを控えめにするという流行は追わないんです」
スイーツの激戦区とも言われる神戸。新しいスイーツも次々と登場し、洋菓子店の選択肢も豊富にあります。しかし、ボックサンでは流行っているかどうかという視点で商品を展開していません。
お菓子を通して、ホッとできる安心感や癒やしをお客様に届けたいという考えが、50年もの間、ボックサンでは受け継がれています。
単純に、消費者の「こんな味がいい」「こんな新食感がいい」という機能面での要求に応えることにフォーカスを置くのではなく、「消費者がどんなニーズを持っているのか。どんな気持ちになりたいのか」という視点で考えぬかれていることは、ボックサンの大きな魅力なのではないかと感じました。
コラボ商品の開発
「甘みは旨み」という教えを守るということは、必ずしも同じ商品のみを提供してきたということではありません。
—たくさんのコラボ商品を展開していますね。
「そうなんです。コンセプトを守りながら、新商品もたくさん出してきたんですよ。お客様の要望に応えつつ、どの商品も神戸の魅力がたくさん詰まった商品を展開しています」と、敏晃氏は力強く語ってくれました。なかには、先日インタビューにお伺いした「神戸紅茶」ともコラボを展開されていて、「みかげ山手ロールケーキ」を神戸紅茶御影店に提供しています。
新商品開発においても、やはり「甘いお菓子こそが人を元気にしてくれる」というコンセプトは変わっていません。
どんな商品であっても、「お客様には、ボックサンのお菓子を食べて疲れを吹き飛ばして欲しい」という想いが強く伝わりますね。
インタビューを終えて
「この道一筋40年、好きなことをやっていて幸せです」と笑顔で語る敏晃氏。とはいえ、材料の高騰や同業者の突然の廃業など、厳しい現状もあるそうです。
しかし、どんな状況であってもむやみに流行を追いかけるのではなく、「甘いお菓子こそが人を元気にしてくれる」という消費者目線を貫いている点は、同社の大きな魅力なのではないかと感じました。
インタビューを通して、ボックサンが消費者に対して「心の底からほっとできる」価値を、お菓子を通して提供したいという強い想いを感じました。
「地域に少しでも感謝を伝えたい」と話す同社では、今日も「甘みは旨み」のコンセプトで、地域の人々を元気にしています。
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