「内向き」を軽視すると地域ブランドは失敗します

ブランドづくり(ブランディング)、と聞くと広告宣伝やロゴ、ビジュアル面の整備を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。企業や商品のブランディングの議論でもこの傾向はかなり強いですし、地域ブランドであってもやはり同じように考える方は多いことかと思います。

これらは確かにブランディングの重要な一側面です。ブランド化を推進していくためには、消費者・生活者のブランドに対する認識が、ブランドを作っている側の期待とできるだけ重なるように進めていく必要がありますし、そのためには外向きのコミュニケーションは必要不可欠になってきます。でも、これはしっかりとした戦略と実行を心がければ大外しはしません。

「内向き」こそが明暗を分ける

これら外向きのコミュニケーションと同じくらい重要なのが、「内向き」のコミュニケーションです。インターナルブランディング、と言ったりもします。簡単に言うとブランドを作っている側が、正しくブランドのことを理解してブランドを毀損しないように行動するよう足並みをそろえること、となるでしょうか。この「内向き」のコミュニケーションが、実はブランドづくりを成功させるキモになってきます。

内向きのコミュニケーションの究極の目的は、全員がブランドを守り育てていくように動けることです。もしブランド価値を毀損するような行動を取ろうとしたら、組織としてそれを止められるようにならなければなりません。たとえば、質の悪い商品にブランド名を貸与したり、ブランドに合わない広告をうちだしたり、過度の廉価販売をできなくするような組織づくり・文化醸成が必要になるのです。

これは、企業内でもコントロールが難しいエリアになります。目先の売上・利益のためにそのブランドらしくないことを平気で行なってしまい、結果としてブランド価値を貶めてしまうことはよくあります。

そして皆が一致して判断できるようになるためには、ブランドらしさを定義する必要があります。守るべきブランドとは何かを明文化し、解釈にブレがないように教育していかなければなりません。

もうひとつ重要なこととして、地域ブランドは得てしてお金がない、ということが挙げられます。お金がないと、外向きのコミュニケーションには限度があります。したがって、内向きのコミュニケーションを通じてブランド伝道師となった地域の人々や企業、団体がそれぞれブランドの価値を体現していく必要がでてきます。その時、バラバラだったら残念なことになる、というのは容易に想像できるでしょう。

地域ブランドの難しさ

地域ブランドになると、企業のブランドづくりよりもさらに難しくなります。企業なんて超大企業であっても数万人ですが、地域ブランドは、住人たちや各種団体も立派な関係者。大変な人数となります。地域が一丸となってブランドづくりをすることができるのか、そのためにどのようにして地域住民や各種団体を巻き込みブランドらしさを打ち出していくのか。そして誰かが道を外そうとした時に、きっぱりとそれを止めることができるのか。これには地域をまとめ引っ張っていくという強い覚悟がリーダに必要になってきます。

地域ブランドを作っているみなさん、内向きのブランディングを軽視していませんか?

本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • ブランドのコミュニケーションには、外向きと内向きが存在する
  • ブランド化の難しいところは、外向きではなく内向きの統制である
  • ブランド価値を毀損しないためにも、内向きのコミュニケーションを重視し、各ステークホルダーが一丸となってブランドを守り、育てていかなければならない
  • とりわけ、金銭的制限のきつい地域ブランドにとって、内向きのコミュニケーションこそがブランド価値を体現することになる