移住政策を考える人のための「移住・交流情報ガーデン」「全国移住ナビ」入門

3月28日、度々地域活性化ニュースで取り上げてきた「移住・交流情報ガーデン」(以下、ガーデンとします)が一般公開されました。

このような場所ができたことは、移住希望者にとっては非常に良いことだと思います。なぜなら自治体の情報が集積しており、自治体同士の比較が容易だからです。このような状況を踏まえると、自治体側としては移住希望者から人気を集めるコンテンツを製作し、他地域と差別化をはかる必要があります。

他地域との差別化を考える

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全国移住ナビには、「こだわり観光情報から(移住自治体を*筆者補足)探してみる」という検索方法があります。それを選択すると、「史跡・施設・神社・仏閣」「景観・公園・庭園」「レジャー・スポーツ」「祭り・イベント」「その他」という5種類の観光情報から検索が可能です。しかし「その他」以外の4種類の条件で実際に検索してみたところ、検索結果は全て1000件を超えてしまいます。1000件以上、同じような魅力を持つ場所があることを踏まえて、他地域と差別化できる情報を発信していかなくてはならないはずです。

では、ガーデン利用者に実際に移住先として選んでもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。私がガーデン・全国移住ナビを利用してみて、多くの自治体で改善の余地があるかもしれない、と思った部分について述べます。

明確なターゲット設定を

移住希望者に選ばれる地域になるために最も重要なことは、誰をターゲットとするかを明確にするということです。移住希望者にとって移住は1回だけの行為です。それ故に、実際に移住する地である「移住優先度1位」以外に意味はありません。逆に言うと、ニッチな需要を持つ移住希望者に対してでも良いので、絶対的に1位でなければならないのです。

この「ターゲットを明確にして、ターゲット外は無視する」という考え方は、移住希望者に向けたコンテンツにおいてあまり意識されていない、と感じました。ガーデンには多くの自治体の移住パンフレットが設置されていましたが、パンフレットを見ると、どのような人に来て欲しいのか、ということが必ずしも明確ではなかったです。

ターゲットを明確にする、という考え方が生かせる部分として、例えばどのようなライフステージ層を狙うのか、ということが挙げられます。来て欲しいのは、1人暮らしの新卒層なのか、子供を連れた家族層なのか、定年退職後のシニア層なのか、などを考えると、どの層を選ぶかによって、それぞれアピールするべきポイントは異なることがわかります。もう一つ例として挙げられるのがUターンとIターン、どちらを狙うのか、ということです。Uターン希望者を獲得するためのハードルと、Iターン希望者を獲得するためのハードルは異なりますし、アピールするべきポイントもそれぞれ異なります。ターゲットを明確にして、彼ら彼女らだけと共有できる魅力を発信していく必要があります。(注1)

オリジナルな魅力の発信を

もう1つガーデンで気付いたことは、「大自然アピール」をする自治体が多いということです。多くの自治体が発行するパンフレットの表紙に、人工物が全くない山や林の写真を掲載していました。しかし、安易にアピールポイントを「美しい大自然」としてしまうことには問題があると考えています。
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問題の一例として、多くの地域のパンフレットが似通ってしまっている、ということが挙げられます。写真は、隣り合って配置されている長野県と岐阜県のパンフレットです。これを見てどちらが長野県で、どちらが岐阜県か分かる人は少ないのではないでしょうか。大自然アピールに頼り、様々な地方との差別化の視点が十分ではないパンフレットを作ることは、回避したほうが良いのではないかと思います。(注2)

もう一つの問題として、移住希望者は本当に典型的な大自然の中に住みたいと考えているのか、ということが挙げられます。移住希望者=一次産業従事希望者、と考えず、郊外には大自然、住む場所はほどほどの地方都市、といったアピール方法も考えられるはずです。大切なことは、安易に地域の魅力を大自然だと考えず、地域の「オンリーワンな魅力」を考え抜き、発信することでしょう

いつやるか、今でしょ

今の段階では、これらの注意点に留意し、ガーデンや全国移住ナビのコンテンツを作成している自治体は多くありません。
全ての層を対象とせず、一部の層を選び、彼らが欲している環境を彼らの目線になってみて本気で考え抜き、簡潔なキャッチコピーで提供することこそが自治体が本気で行うべきことでしょう。


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

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ポイント

  • 全ての属性の人に好まれる地域はありません、ターゲットを絞りましょう。
  • 大自然アピールに留まらず、ターゲットに対して魅力的な要素を考えてみましょう。
  • 「移住・交流情報ガーデン」「全国移住ナビ」、どちらもライバルが少ない今がチャンスです。


1)石川県のパンフレットは明確に高校・大学卒業生にターゲットを絞っての情報発信を行っており、良い例だと思います。
2)北海道のパンフレットの裏表紙では、企業が「気分は、北欧生活。」というキャッチコピーで、北海道の大自然をPRしていました。大自然をPRしているものでも、キャッチコピーから「オンリーワンな魅力」を感じさせるものであり、非常に上手だと思いました。