地域ブランドにはストーリーが必要だといわれるが、そもそもストーリーってなんだろう?

地域ブランドにはストーリーが必要だ。こういう話をよく耳にしますし、通助で繰り返し述べてきたことでもあります。ところが、このブランドストーリー作りに苦心する自治体や企業が多いようです。その原因の 1 つとして、そもそもブランドとは何で、ブランドのストーリーとは何なのか、どういった要素が必要なのかを理解しないままに「何かしらのもの」を作ろうとしていることにあるように思います。

ブランド作りとは

これは非常に難しい設問で、なかなか簡単に説明することはできません。これだけで何冊も本が出ているわけですから、通助のひとつの記事のそのまたひとつのセクションで説明しようというのは大仰なことです。が、それでは何も進まないので、ここでは簡単に本記事の前提となる部分にフォーカスをおいて述べてみます。

ブランドは、独善的に作られるものではありません。ブランドというのは生活者・消費者(以下生活者としてまとめてしまいます)の頭の中にあるイメージや効能、心理的な近さや情緒的な結びつきによって形成されるものです。ブランドの作り手側が「うちのブランドはこういうブランドだ」と一方的に宣言したところでそれが生活者の認識と大きくズレているのであれば、本質的にそのブランドは生活者の頭の中にあるイメージ通りのブランドなんです。誤解されているとか伝わっていないとか言い訳をするのではなく、生活者がそのように認識しているブランドこそが自分たちのブランドの現在の姿なのだと認めることからブランド作りはスタートします。

そしてブランド作りというのは、生活者の頭の中にあるブランド像と自分たちが「こうありたい!」というブランド像を一致させることこそがブランド作りだと言えるでしょう。生活者と認識を一致させるためには、継続的かつ一貫したコミュニケーションや一貫した雰囲気が必要となってきます。短期的にオイシイ話に乗っかるなどして自分たちのブランドを壊さないように、規範的に行動しなければなりません。このあたりは、コラム「内向き」を軽視すると地域ブランドは失敗しますにも似たような話を書いていますのでご参照ください。

「内向き」を軽視すると地域ブランドは失敗します

ストーリーとは

ブランドのストーリーというと創業者の言葉とか発祥の由来の物語のことだと考えてしまう方も多いのですが、「地域ブランドにはストーリーが必要だ」という文脈で語られるストーリーはそういったものだけではありません。ここでいうストーリーとはもう少し意味を広げ、そのブランドのあるべき姿といえるものです。生活者にどのように理解・認識してもらいたいかということです。ブランドの目標といっても差し支えないでしょう。

そして、「生活者に正しく理解・認識される」という要件から、ストーリーを作っていくにあたって留意しなければならない点が浮かび上がってきます。

認識されるためには、埋没してはならない

世の中には情報が溢れかえっています。総務省の情報流通インデックスによると、現代は 1 日あたり DVD 2.9 億枚分の情報が流通しているそうです。これは平成 21 年時点のデータですから、平成 24 年も末の今は更に増えていることでしょう。ブランドを認識してもらう以前に、ブランドを知ってもらう必要があるわけで、それはつまり膨大な情報量の中から「見つけてもらう」必要があることにほかなりません。見つけてもらうためには、目立っている必要があります。つまり、他にはないユニークさをストーリーの中に包含していることが重要です。

ユニークさを発見するためには、外部の競合を正しく理解する必要がありますし、自分たちの保持している資源を整理整頓する必要も出てきます。また、内部にいると「あたりまえ」になってしまっていることが外部にとって非常にユニークであることも多いため、客観的に進めていく必要があるでしょう。

このユニークさは、非常に些細なことで構いません。些細なことであってもユニークであれば、それはコミュニケーションや打ち出し方を工夫することでなんとでもなります。よくある失敗例は、まったくユニークでないものをユニークだと思い込んでしまい、埋没していくケースかもしれません。

認識されるためには、根拠がなければならない

目立つだけでは不十分で、しっかりと認識されるためには納得してもらうことが大切です。地域をブランドとして売りだしていこうという場合、他にはないユニークさがどういう根拠でその土地に紐付いているのかを示します。つまり、その土地にユニークなアピールポイントが、その土地の文化や歴史、地域資源と説得力ある形で結びついていることが必要であり、そのふたつをセットにしたものがブランドのストーリーとして活用されることになります。これがないと、生活者の中でメッセージを納得することができず、結果として正しい認識として残ることは難しくなります。ユニークさを納得させるための根拠をストーリーに盛り込むことを忘れないようにしましょう。

地域のストーリーと地域ブランドのストーリー

ブランドストーリーには、上下関係のようなものが存在します。ある広い領域のブランドとその中の一部の領域のブランドの関係のことで、ブランドの親子関係といったりもします。たとえば京都という地域(土地)のブランドと、京都の野菜である京野菜には親子関係が存在しています。

多くの地域ブランドはその属する地域(土地)のブランドと親子関係にあることがほとんどではないかと思われます。その際に気をつけなければならないことは、地域ブランドは、できる限りその親である地域のブランド(ややこしいですね…)のストーリーのもとで活動するべきだということです。なぜなら、地域のストーリーと地域ブランドのストーリーの間には、強烈な相互補完関係が成立するからです。

この恩恵をみすみす捨て去る必要はどこにもありませし、地域ブランドが地域経済に貢献するためには、やはり地域のストーリーと密接に連動しておくメリットは大きいのです。コラムご当地グルメは“つくる”べきか、“みつける”べきかにおける議論とも関わってきますので、そちらも合わせてご参照ください。

地域のストーリーと地域ブランドのストーリーの間に存在する強烈な相互補完関係とはどういったものなのでしょうか。

左の図にも示しましたが、地域ブランドにとっては、地域のストーリーから湧き出てくるハロー効果を享受することができます。ハロー効果とは認知におけるバイアスのことで、ある特定項目の評価に基づいて、それ以外の項目の評価も引きずられてしまうことをいいます。東大出身だから仕事ができる、という話と似ているかもしれません。これは、東大というハロー(後光のことです)によって、仕事ができるかどうかという必ずしも関係ない評価項目にまで東大のインパクトが及んでいる例です。一般企業でもハロー効果を活かしてサブブランドを立ち上げるケースはよく見られます。たとえばコカ・コーラ社は、コカ・コーラという親ブランドを活かして、コカ・コーラゼロというサブブランドを立ち上げていますが、このコカ・コーラゼロのブランドは親ブランドであるコカ・コーラの影響を多大に受けています。

一方で、地域にとっても大きなメリットがあります。地域ブランドが成長すれば成長するほど、リターンはその地域にも返ってくるからです。地域のブランド力強化のためには、その地域に存在する強い地域ブランドの手助けが必要不可欠です。もちろん、ここでも変なブランドに対して地域の名前を貸与してしまったがために、地域へネガティブのリターンが返ってくることもありうるわけですから、規範的なブランド運用は欠かせません。

最新の地域活性化ニュースはこちら

高知県独自の幸福度指標が発表される どのような指標で構成されているのか?


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • ブランド作りというのは、生活者の頭の中にあるブランド像と自分たちが「こうありたい!」というブランド像を一致させることである
  • ブランドのストーリーとは、生活者にどのように認識してもらいたいかというブランドの目標のことである
  • ユニークなアピールポイントが文化、歴史や地域資源と説得力ある形で結びついていることが必要であり、そのふたつをセットにしたものがブランドのストーリーとして活用される
  • 地域のストーリーと地域ブランドのストーリーの間には、強烈な相互補完関係が成立するため、地域ブランドは積極的に地域のストーリーを取り入れていくべきである