観光客の選択肢に入ることの重要さ

旅行に行こう、そう考えたときに人はどのようにして旅行先を決定するのでしょうか。インターネットの浸透に伴って、人の意思決定プロセスは変化していると言われていますが、単純化すると次のようなものになるのではないかと推定できます。

A) 何らかの欲求が生じ、旅行に行きたいと思う
 ↓
B) その欲求を満たせる旅行先を、ある一定の条件のもとで探す
 ↓
C) リストアップされた旅行先候補のなかから、ひとつの旅行先を選ぶ
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D) 旅行に行く

このプロセスをもとに考えると、最終的に観光客に来てもらうためには1)旅行先候補に挙がる、2)旅行先候補の中から選ばれる、の 2 つが最低限必要になってくることがわかります。今回は、1)旅行先候補に挙がるについて考えてみたいと思います。

以下、例としてカニを食べたい、という欲求で旅行に行こうと思いついたとします。

思い浮かべてもらえるかどうか

選択肢に入るための必要条件として、その観光地について旅行目的とリンクして認識している、ということが挙げられます。知ってもらうだけではダメで、理解してもらう必要がでてきます。

人には、すでにある程度知識があります。カニを食べたい、と思ったときに調べるまでもなく、すでにいくつかの候補地が頭に浮かぶでしょう。仮に、城崎、福井、天橋立が思い浮かんだとしておきます。

人はなぜ思い浮かべるのか。それこそが、その土地から連想されるイメージ、つまりブランド力ということができるかと思います。強いブランドは、連想されるイメージや想起される価値が、その土地がアピールしたいモノ・コトに一致しているのです。

もし、あなたの土地をこの段階で思い浮かべてもらえるならば、それは大きな強みとなります。もし、この段階で思い浮かべてもらえなくても、まだチャンスは残されています。人は「調べる」からです。

探しだしてもらえるかどうか

他にもカニが食べられるところはないのかなと、人は自分の知識外にも選択肢を求めて調べる習性があります。

どういう手段で調べるかは、人によって異なります。ターゲットとなる生活者の行動を理解して、彼ら彼女らが調べる先にしっかりとアプローチをしていくことが重要になります。よくあるパターンとしては、インターネット検索、旅行代理店、友人に聞く、などがあるのではないでしょうか。

ある程度、観光地として有名なところであれば、旅行代理店に取り上げてもらうことも、インターネットで特集を組んでもらうことも可能かもしれません。しかし、そこまで有名でない土地の場合、限りある資源を戦略的に投下していくことになります。いわゆる広告活動、広報活動がこれにあたります。

こうして、他にも境港や網代でおいしいカニが食べられそうだ、ということを発見し、選択肢に入ることになります。そして、城崎、福井、天橋立、境港、網代で2)旅行先候補の中から選ばれる、の戦いに突入することになります。残念なことに選択肢に入らなかった香住は、この人の旅行先として選ばれることはありません。

八方美人は好かれない

ここで重要なことは、観光地をどのようなキーワードで連想させるか、見つけ出してもらうか、ということです。カニでも景色でも温泉でも伝統工芸品でも山でも海でも、なんでも思い浮かべて欲しい、というのは贅沢です。エッジが効いていないと、たとえカニが食べられて、いい景色に温泉があって、伝統工芸品を楽しめて、山登りも海釣りも楽しめたとしても、強い印象とならず埋もれてしまいます。限られた少数のエッジをその地域内で定義し、集中的な資源投下が必要となります。そして、そのピックアップした「地域のエッジ」で選択肢に入るための活動を、地域は進めていく必要があります。実はこれこそが、地域ブランド、観光地ブランドの基本のキなのです。

本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 観光客に来てもらうためには、観光客の旅行先候補に選ばれなければならない。
  • 観光客には観光の目的があり、その目的にあった土地として認識される必要がある。
  • ある目的を達成するための候補地として思い浮かべてもらえるのか、思い浮かべてもらえないなら見つけ出してもらえるのか、にフォーカスをおく。
  • なにもかもできる土地には、特徴がでない。ある程度絞ったキーワードでしっかりとその土地のエッジを打ち出していく必要がある。