イベントの成功=地域活性化の実現ではありません

近年漫画やアニメ等のコンテンツを利用した観光振興が数多く行われています。本サイトの「地域活性化ニュース」でも良くそれらの事例を紹介してきました。

それらのコンテンツは地域に足を運んでもらうための導線としてはうまく機能すると思われますが、あくまで「地域に来る導線であって地域を好きになる導線ではない」という落とし穴が潜んでいます。本コラムではその落とし穴についてとそれを回避するために意識すべきことを述べたいと思います。

漫画、アニメ、ゲーム(…etc.)×地域活性の落とし穴

前述したように漫画やアニメ等のコンテンツはあくまで“地域を訪れる為の導線”に過ぎず、“地域を好きになる為の導線”ではないという落とし穴があります。お金をかけて開催したイベントを通して、地域が得たいものは決してそのコンテンツの人気向上ではありません。その地域の外部からの収入増加、もしくはその地域のファンを作ること(もしくは両方)であるはずです。a0731_000099人気のコンテンツであればあるほど来訪者は増えるので、一見すると活性化であるように思えます。しかし多くは一過性のイベントにすぎません。地域の外よりの収入増加やイベント期以外の観光客数の増加という結果に繋がらない上に慣れないことをした事によるイベント疲れを誘発しやすいという落とし穴が待ち構えているのです。では、如何にしてその落とし穴を避け、「地域を訪れる為の導線」を活用していけば良いのでしょうか。

落とし穴を回避するために意識すべきこと

まず「地域活性」の定義から見つめ直しましょう。通助(および運営会社ホジョセン)では地域活性を以下の2側面より考えています。

  1. お金を地域の外から稼ぐこと(移出力)
  2. お金を地域内で循環させ、地域外への流出を防ぐこと(循環力)

詳しくはこちら

地域活性化は競争だ

今回のような事例は観光誘致であるため、1番のいかに地域の外から稼ぐかという点が重要となってきます。
地域の外から稼ぐという方針をしっかりと持った上で、地域活性化を図る以上は漫画やアニメ等のコンテンツはあくまでもツールの一つに過ぎないという認識を心に刻む必要があるでしょう。
そのためイベントの目的(ゴール)を“地域のファン獲得”ではなくて、“一時的な移出力の獲得”であるという共通認識を持つ必要があります。

漫画やアニメ等に代表されるオタク産業の市場規模は2014年度10,005億円(矢野経済研究所調べ)であり、今後も拡大していく可能性が高い市場であると予測されています。しかし、概してこの市場に属する人たちをターゲットとする場合は直接の目的とは異なる消費を期待することはあまりできないでしょう。

漫画やアニメを利用したイベントに参加する人たちはあくまでもそのコンテンツを目当てで訪れている為にそれ以外の点に関しては無頓着であるケースが多いにあります。せっかく地域に足を運んでもらったのに食事はコンビニで済まされては地域の収入獲得につながりません。

域内調達率とは 【地域活性化用語集】


(こちらの地域活性化用語集もご参照ください。)

その市場を的確に捉え地域外収入を獲得するためには「経験ストーリー」が重要となってきます。つまりは登場人物の感情や経験を追体験できる仕組みが必要となってきます。(詳しくは 3つのポイントで解体! 経産省「地域ストーリー作り研究会報告書」にて取り上げています。)

3つのポイントで解体! 経産省「地域ストーリー作り研究会」報告書

この場合、来訪者は追体験することに対しては惜しみなく出費する傾向があります。そのため、作中と同じ食事メニューの販売や、追体験をより出来るための小道具の販売を行うなど“追体験”という経験の部分で収入を得る仕組み作りが重要となってくるでしょう。

地域のファン作りだけが活性化ではありません。地域の収入を増やすための適切な戦略をマーケティング等を活用しつつ探っていくべきです。

アニメによる地域活性化とは 【地域活性化用語集】


(アニメ等を利用した地域活性化について考える上での基本的な考え方は、こちらの「地域活性化用語集」で詳しく論じています。こちらも併せてご覧ください。)


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 漫画、アニメ等のコンテンツの場合は“一時的な移出力の獲得”を目指すという共通認識を持つ必要がある
  • それらのコンテンツをあくまで活性化のためのツールとして捉えるしたたかさを持つべし
  • 経験ストーリーに基づく形での収入の仕組みを作るべし