今の実務に活かせる、地域ブランド成功事例に学ぶ地域ブランディング

今回は、日常の騒がしさとは全く異なる清らかで涼しげな魅力を持つ「京都貴船」を、優れた地域ストーリーの作成と、それと合致した巧みな地域ブランディング、という観点から見ていきます。

地域ブランドとは 【地域活性化用語集】

地域のブランディング 【地域活性化用語集】


(「地域活性化用語集」のブランディングに関する項目も是非ともご覧ください。)

地域ブランド・地域ブランディングとは

「貴船」という観光地に対して、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。おそらく「川床料理」、または「貴船神社」といったイメージを持っているのではないかと思います。

以前、このブログでも地域ブランド・地域ブランディングとは何かについて触れましたが、地域ブランドとは、生活者の中にある地域に対しての認識、地域ブランディングとは、前述のような生活者の頭の中にある地域に対するイメージと、ブランドを作っている側(この場合は貴船にあるお店や貴船観光会の方々など)がこんな風に思って欲しいというイメージを重ねるために行う全ての行為を指します(詳しくは地域ブランドとは?を参照してください)。

地域ブランドにはストーリーが必要だといわれるが、そもそもストーリーってなんだろう?

そういった中で貴船においては、生活者の認識(地域ブランド)とブランドの作り手の認識(地域ストーリー)が「川床料理」、「貴船神社」という点に綺麗に集約されています。これは、貴船ブランドを構築している全ての人々が、貴船のブランディングを上手に行っているからです。

貴船の地域ストーリー

貴船の地域ブランディングは、ブランドのあるべき姿を指す「地域ストーリー」に基づき、一貫しています。それは「清らかな水」の湧き出る地、という地域ストーリーです。以下にそのストーリーを構成する要素を例挙します。

 1.川床料理を楽しめるお店が醸し出す統一感(スタイル、営業時間、価格等)
 2.パワースポット、縁結び、水の神様として有名な貴船神社
 3.貴船の地域全体の気温が過ごしやすい避暑地・京都の奥座敷
 4.貴船の水を使った地ビール「スイゲン」
 5.源義経が修行中に喉を潤した「息つぎの水」がある鞍馬山
 6.紫式部が蛍の歌を読んだと言われる蛍の名所である貴船 蛍岩

京都貴船は、清らかな水というオリジナリティのあるキーワードを通して、観光客の機能的ベネフィット(貴船川でとれた新鮮で美味しい川魚が食べられる、貴船神社への参拝で得られるご利益や効用といった便益)と感情的ベネフィット(貴船に訪れることによって生まれる満足感や幸福感などの感情を与えることができる便益)を売っているのです。これにより、貴船を訪れる人の、美味しいものを食べたい、願いを叶えたい、歴史を感じたい、元気になりたい、といったニーズを満たしています。その結果、このような機能的・感情的ベネフィットをもたらす観光地という、地域ブランドが出来上がっているのです。このような京都貴船の地域ストーリーは、地域ブランディングを考え、実践していく上で、優れた事例の1つと言えるでしょう。

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本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 地域ブランディングとは、生活者の地域に対するイメージと、ブランドを作っている側がこんな風に思って欲しいというイメージを重ねることを目的として行う行為です。
  • 貴船が強いブランドを持っているのは、独自性のある地域ストーリーに合致した、地域ブランディングを徹底的に行っているからです。
  • 地域の魅力を向上させることを考える際、やみくもに何かを行うのではなく、地域ストーリーに合致した行為のみを行なってゆく必要があります。