鳥取県のアンテナショップに学ぶマーケティング戦略

東京を中心に展開されている各都道府県の特産品・加工品の販売やその地域の観光情報コーナーが設置されているアンテナショップ。地方自治体のアンテナショップの役割として、①特産品の拡販(店頭に並べられた商品に対する消費者の評価や消費動向、売れ筋商品の情報収集をもとにした消費者ニーズの把握と商品開発)②地域や地元産業に対する認知度の向上と観光資源のPR ③自地域以外の人との交流する拠点の3つの機能があります。これらを統合すると、アンテナショップには都市部への情報発信と都市情報の収集というマーケティング的要素が強い施設であることが窺い知れます。

 今回は鳥取県のアンテナショップからみえてくるマーケティング戦略について見てみることにします。

 鳥取県のアンテナショップで大きな特徴と言えるのが、本来のアンテナショップの機能を備えた施設(とっとり・おかやま新橋館)が東京に設置されていることに加えて、地方の特産品・加工品を知らない地元住民のためのアンテナショップが鳥取県内に設置されていることです。

地元鳥取県に設置されているアンテナショップ「クラカフェ」ではただ単に地元の特産品を販売しているのではなく、モニタリングを通して消費者の声を活かすシステムを行っています。具体的には、事前登録した主婦中心の在宅モニターが月2回集まり、商品を試食して意見を述べ合う「おしゃべりcafe」を開催しそこで得られた意見や、SNS(Facebook、Twitter)を活用して、商品に関する消費者の声や生産者へのメッセージを収集し、生産者や事業者などの商品提供者へのフィードバックを行う流れが仕組み化されています。

 実は鳥取県のアンテナショップが行っていることは、企業が行うマーケティングリサーチと同様のことを実施していることになります。マーケティングリサーチには大きく分けて、数値で表現できる情報を集める「定量調査」(アンケート調査など)と数値表現できない情報を集める「定性調査」(インタビュー調査など)という2つの手法があり、鳥取県の「クラカフェ」が行っている「おしゃべりcafe」は、まさに後者の定性調査のグループインタビューに該当し、SNSを活用した消費者の声の集約は、前者の定量調査のソーシャルメディア分析(SNSやTwitter上の書き込みを収集)に該当します。

特にオンラインショップにおいてTwitterを使った商品情報の発信と合わせてお客様のつぶやきが商品コメントに掲載されるシステムは、商品改良や新商品開発に活かされ、鳥取県の名産を使った石鹸や天然温泉水を使った化粧品、地元の名産を使用し期間限定で販売しているスィーツなど、独自の商品展開がなされていることも大きな特徴の一つですが、実はこの商品郡にはしっかりとしたマーケティング戦略がみえます。つまりターゲティング(誰に売るのか)とベネフィット(何を売るのか)の軸がしっかりしているということです。

 ターゲティングの側面からみると、クラカフェが実施している「おしゃべりCafe」におけるモニターは主婦であり、属性として女性の意識や潜在意識(=インサイト)をリサーチしているということは、主に女性を対象にした商品開発に力を入れていることが分かります。

ベネフィットの側面からみると、地元鳥取県の温泉水を使ったミスト(香り付き化粧水)・鳥取県の名産を使用した石鹸などが陳列されたビューティーコーナーや期間限定のスィーツが並べられた専用のコーナーが設置されており、利用者に商品を購入することで得られるメリットがイメージしやすくなっています。

つまり、クラカフェでは化粧品やスィーツという商品を女性(子供連れのファミリー層)に対して、「美と健康」・希少性のある美味しいものを食べる「喜び・楽しさ」を売っていることになっています。

 これらから見えてくることは、クラカフェでの商品開発・販売方法はその商品によって何が得られるのかを訴求した生活者視点での「コト売り」にフォーカスをおいていることで、クラカフェのブランド力(=価値)を向上させているということです。

鳥取県内にあるアンテナショップ「クラカフェ」での商品開発・販売方法におけるマーケティング戦略には学ぶところが多いように思います。


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地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • 地域の内側の声を活かした商品開発をしましょう。
  • 生活者視点でどんな「コト」を売れるのか、考えましょう。