モノ売りからコト売りへ ~長期顧客を獲得したければ、感情的インセンティブを刺激すべし。

モノ売りからコト売りへ

マーケティングの世界で古くから使われている格言の一つとして「“People don’t want to buy a quarter-inch drill, they want a quarter-inch hole.”– Theodore Levitt(人はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいだけなのだ。セオドア・レビット)」というものがあります。
ドリルを買いに来たお客さんはドリルという商品を欲しているのではなく、穴を開ける事を達成するために買いに来ているのです。商品としての「モノ」を買っているようで、実は穴を開けることが出来るという「コト」を買いに来ていることになります。電化製品を買いに行った際に店頭で説明を受けたものの、購入の決め手はネット上のレビューでしたという経験も往々にあると思います。これは観光においても同様です。どれだけ特定の温泉や旅館が素晴らしくてもそれは「消費者の選択の上位にあがる」可能性が高いだけであって消費行動に直結するわけではありません。観光においても場所の魅力や特徴を押し出す「モノ」売りの時代から、「コト」売り思考への移行が求められています。

「モノ売り」スライド17
いかに素晴らしい製品・サービスであるかというモノ視点での考え方
「コト売り」
その製品・サービスによって何が達成されるかというヒト視点での考え方
=製品・サービスと消費者の関係性を定義したもの
右図は弊社スライドより抜粋しました。

定性調査とマーケティング

「コト」売りプラン~記念日の特別さを売る高級旅館

「コト」売り発想の施策として函館の高級旅館「別邸今宵」のキャンペーンを紹介します。キャンペーン内容は旅館の1周年記念に即して“1周年”を迎えるカップルを募集するというものです。(その“1周年”に特別な制限はなく結婚して、付き合って、禁酒して、初デートして………と何でもあり!)当選者には無料宿泊+シャンパン、花束などの5万円相当が進呈されるという内容です。

このキャンペーンは、1周年の感謝を込めたキャンペーンであるとともに「コト」売りを行うことによる新規顧客獲得戦略でもあります。1年に必ず訪れる記念日に特別な事を行う事や、二人だけの思い出を追体験するような過ごし方をする人たちは相当数いると想定されます。記念日といったような日の消費行動は主に「コト」が鍵となってきます。具体例を挙げると記念日に高級フレンチを食べにレストランに行くカップルは「高級フレンチを食べたい」からそのレストランに行くのではなく、「非日常的な時間を過ごしたい」からこそ行くのです。

そのためこのキャンペーンを利用して旅館に訪れた二人に対して旅館側は以下のストーリーを想像するでしょう。
①(憧れの)高級旅館に泊まり特別な記念日を過ごす事になった2人は高級旅館ならではのサービスや雰囲気に感動する。
②「記念日はこの旅館で」と再び記念日を旅館で過ごすために貯金をする。
③高級旅館宿泊を定期的に訪れ続ける

記念日を過ごすために訪れる2人は「十分なサービスと雰囲気を堪能する」という「モノ」を買うと共に、「(日常から背伸びして)思い出の記念日を過ごす」という「コト」を買っていることになります。普段そのような場所を訪れない人であればあるほど、サービスや雰囲気への感動と憧れは一際大きくなり、背伸びをしたくなる欲求は比較的高まりやすいと思われます。感動はSNSなどを介して伝搬しやすいため、旅館側もサービスの腕の見せ所となります。

記念日に費やしたお金は金銭的なインセンティブではなく感情的なインセンティブを求める消費行動であります。多くの競合の中で商品としての魅力だけでの差別化には限界があります。どれほどの2位が積み重なったとしても結果にはつながりません。

いかに確実に1位の地位を占めていくか。観光地には今「コト」売りの思考が求められているのです。

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定性調査とマーケティング

ポイント

  • コト売り思考を意識すべし
  • 雰囲気ごと商品を売るべし
  • 一度来た客の「1番」と成るべくおもてなしをして常連を作るべし