ブランドのかさの下での観光戦略 *キクキク処方箋 富山ツアーを例に*

いかにして観光客を呼び込むかが各自治体の共通課題でしょう。そんな中で面白い取り組みをしているのが丸の内朝大学の講座から生まれた、「キクキク富山ツアー」。まず東京の問診カフェにて、富山の薬売りのイメージを利用し、事前にアンケートに沿った内容の処方箋が出されます。その処方箋により、個別の処方プランとしてその人に合ったオーダーメイドのツアーを組んでもらえます。そのツアーの中身は、地元の農家さん家でのランチタイムやお昼寝タイム、陶芸体験や手打ちそば体験やお土産作りなど、ユーモアでとても密度の濃い内容となっています。

キクキク富山ツアーのGood Point

*アイディアの発想が地域に根付いたもの*
なによりもキクキク富山ツアーの面白いところは、問診→処方箋という企画の斬新さでしょう。ですがただ奇抜なアイディアが良いというわけではありません。そういう奇抜なアイディアは最初はよく取り上げられますが、ブランドを毀損してしまうリスクがあります。この場合は、富山と言えば薬売りというイメージを利用しているために富山ブランドの価値向上につながっています。江戸時代から現在までに、日本全国の家庭へ配置家庭薬を売って歩いたという歴史が富山にはあります。処方箋ツアーと聞いて、すぐに薬=富山のイメージから人々の記憶にとどまりやすくなり、そしてまた富山らしさという一貫したブランド戦略としても有効的です。

*観光客の誘導が上手*
冒頭でも述べた通り、他の地域からどのようにして人を呼ぶかを考えることが必要不可欠です。その中でこのツアーは東京から富山にダイレクトに人を呼ぶ事に成功しています。都心で疲れている人に富山で安らぎを提供するというコンセプトもしっかりと固まっているため、どういう層に働きかけたらいいのかも明確になっています。たしかに規模が小さいからできることでもありますが、それぞれのニーズによってその人だけのツアーが組まれるので、お客さんにとってそのツアーへの興味が湧きやすく、実際に行ってみようというきっかけづくりにつながります。このきっかけ作りを提供することが極めて重要になるのです。いかにして、お客さんに楽しそう・面白そうと思わせる顧客体験を作れるかどうかが鍵となります。

*本来の地域の宝物をアピール*
観光客はその土地のことを事前にほとんど知りません。そのためガイドブックやネットの口コミなどのメディアを使用することが大変多くなりますが、そうなると有名観光地、観光資源に人が集まりやすくなります。しかしメディアによる観光地情報は往々にして地元に根ざした文化のものであるとは限りません。近代になってその土地が観光地化し、観光のために作られた文化というものが多く誕生しました。またマスメディアの発達によって、実際に現地に観光に行く前に、その場所についてのイメージを作り上げてしまうことがあります。その中で、このキクキク富山ツアーでは地元の人が監修しているため、地元の人しか知らない昔からずっとある魅力的なスポットを回ることができ、ほかでは味わえない体験をすることができます。イメージを事前に作ることができないので、その分予想外のイベントも多く、感動も大きくなります。有名な観光資源だけでなく、本来の地域の魅力を知ってもらうためにその土地らしさを活かせる戦略を立てることが大切です。

参考リンク:都市と地域が一緒に取り組む! 受講生発のイベント 富山をプロデュース


本記事で説明してまいりました地域ブランドの育成に関係したものとして、本ブログの運営会社である株式会社ホジョセンでは、地域ブランド・地域ストーリー作りの課題について述べたレポートを発表しております。無料ダウンロードできますので、こちらもどうぞご覧ください。

地域ブランドの育成における課題〜企業におけるブランディングとの比較から〜

ポイント

  • ただ奇抜な話題性のあるものではなく、地域に根ざしたアイディアを採用すると人々の記憶にも残りやすく、一貫したブランド戦略にもつながる。
  • 観光客それぞれのニーズに適したプランニングを提示することで、きっかけづくりを提供することが地域活性化を行うためには大切である。
  • 観光パッケージ化されたものではなく、その土地本来のらしさが活かせるような有名ではない観光資源を発掘することが欠かせない。